こたつモラトリアム

できることなら永遠にここで暖をとっていたい

2020年3月

 

3月8日

昼ごはんにラーメンを食べに行こうとしたら途中で台湾料理屋を見つけた。

お店の外にメニューボードが出いてたのでどんなメニューがあるのか見ていたら、からんころんとドアが開いてお母さん的店員さんが「いらっしゃいませ〜どうぞ〜」と笑顔で声をかけてきた。

やってしまった、と思いながら泣く泣くラーメンを諦め、お店に足を踏み入れた。店内には一人も客がいなかったが、それが偶然ではない事はドアを開けてまで客を勧誘する姿勢からなんとなく察しがついた。

さて、メニューの中で一番惹かれたのは飲茶セットだったが、800円のラーメンを食べるつもりで家を出た手前、1600円の飲茶セットを頼む気にはどうにもなれなかった。よって780円の焼きそばで手打ちとした。そばだけにね。

焼きそばを待つ間、内装に目をやる。よくわからないポスターやアンティーク雑貨が散りばめられていてエスニックな雰囲気を醸し出していた。壁に掲げられたメニューは「銭さんの春巻き」「張さんの小籠包」など、○○さんの○○構文で書かれている物が多かった。残念ながら○○さんが一体どこの誰なのか一人も知らなかったので、追加情報として意味を成しているものは無かったが、小さく横に「トテモウマイ」と書かれていたのできっとウマイんだろう。

出てきた焼きそばは焼きそばの味がした。不味いわけではないけどラーメンの口になっていた自分には少しパンチ力が足りなかった。

ポイントカード作りましょうか?と聞かれたのでかまいたちを思い出しながらお願いしますと答えた。初めてだから、という理由でスタンプを1つサービスしてくれた。300円OFFの特典までに必要なスタンプはあと18個。これから頑張って埋めないとな、と思いながらお店を後にした。

 

 

 

 

3月9日

暖かくて風も弱かったので琵琶湖沿いのベンチで読書をした。下宿先からはちょっと距離があるけど、人がいなくてお気に入りの場所だ。

顔を上げると目の前の波打ち際に杖をついたおじいさんがいた。無視して読書に戻るとバシャッと音がした。湖面に小石を投げている。2回しか跳ねない。何度やっても2回。

ひとしきり投げるとおじいさんはどっかに行った。もしかしたらこのベンチは優先座席で譲るのを待っていたのかもしれない。しかし隣のベンチも隣の隣のベンチも空いていた。そう、隣の、隣だ。俺の名前はキンリー・ドルジ。ブータンから来た。

少しすると中学生野球部集団が来た。今日は人の出入りが多いな。開幕早々テンションが高く、泳ぐか?泳がないか?泳ぐならズボンは脱ぎたいな、でも脱ぐならあそこのベンチにいるメガネ嫌だなどっか行かねぇかな、みたいな感じだった。向こうは10人ほどいて数の力では負けていたので、私はiPhoneで流していたカネコアヤノの音量を上げた。

男らしい言葉遣い、というのがあまり好きになれない。自分の口から発する言葉と、自分の胸に潜む思いを一致させたい。理想を求め過ぎているだろうか。

 

 

 

 

3月10.5日

家に居たくなくて深夜2時に家を出た。始めは行く宛も無く街を歩いていたが、次第に足取りは琵琶湖の方へと向かった。1.5日前に黄昏たあのお気に入りの場所。

近づくにつれて高揚感が高まった。何しろ自分はあの場所の日中の姿しか知らない。深夜という時間帯があそこをより一層特別な場所にしてくれていると確信があった。

時刻は深夜3時を廻った。目的の場所に足を踏み入れた時、恐怖を感じた。ずっと向こうまで続く暗闇。波の音は寄せては返すなんていう優しいものではなく、海岸線に打ちつける激しいものだった。その音に終わりが来ないことを昼間は美しく感じたが、今は恐怖でしかなかった。

5分もしない内にベンチから腰を上げた。そこには自分を受け入れてくれる真昼のあの抱擁感は無くて、代わりに早くここから立ち去れ、という拒絶が私の頬と耳を冷たく刺した。怖かった。

帰りの街は全くの別モノになっていた。日中の街は私になんか興味を見せず忙しなく動く。でもその時は街全体が私の一挙手一投足を注意深く観察しているように感じられた。通り過ぎる車、アパートの換気扇、ショートした蛍光灯の火花。すべての音が私の方へ向けられている気がした。

家に帰ると、往路で買ったいろはすに復路では一度も口をつけていない事に気がついた。まだペットボトルに半分以上残っていたそれを飲み干す。深夜3時の彦根は私の知らない街だった。物事は二面性を備えている。一つ勉強になった。

 

 

 

 

3月18日

でかい文房具屋とでかい本屋に行った。 

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文房具屋を見てまわるのは結構楽しい。なぜなら商品の陳列に統一感があるからだ。文房具というのは案外シリーズ物の商品が多く、そういった物がズラーッと一面に並んでいるのを眺めると、マンガが全巻揃った本棚を眺めるのと同じような清々しさを感じる。

 

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最近の書店は本屋大賞このマンガがすごい!の展示で溢れている。個人的にはどちらも信頼できるハズレの無い賞だと思っているのだが、それにしてもどの書店も似たり寄ったりすぎないか?まあ賞の在り方としては成功だろうし、仕方ないのかな。このマンガおすすめです。

 

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散歩をすると野草がちらほら目に入るようになってきた。春の訪れだね。

 

例によって琵琶湖を眺めながら本を読み、家に帰ってキーボードをぽろろんと弾き、バイトに行った。18:00〜19:30まで一人もお客さんが来なかった。店長は株式投資を始めたいらしい。俺はやめといた方がいいと思うんだけどな…。

 

 

 

 

3月21日

親の金で寿司を食らう。

目の前で寿司を握るおじさんに対してさえ、「この人はどんな人生を送ってきたんだろう…」と想像してしまい、おいおいそんなこと考え始めるとしんどくなるぞ、もっと肩の力抜いていけ、と自分に言い聞かせた。そういうややこしい事はマグロが忘れさせてくれた。

 コロナウイルスが世界中で猛威を奮っている。事態が早く収まるのを願いながら今日も手を洗う。

 

 

 

3月25日

kotatsu-moratorium.hatenadiary.com