音楽備忘録 Vol.1 60分弱の世界旅行 くるり 『THE PIER』
今回は私がこの世で最も好きなアルバム、くるりの『THE PIER』について語ろうと思う。
『THE PIER』は2014年9月17日に発売された。
同時期の日本のバンド音楽シーンは如何なるものかと言うと
BUMP OF CHICKENの『RAY』(2014年3月12日)
KANA-BOONの『フルドライブ』(2014年5月21日)
Base Ball Bearの『二十九歳』(2014年6月4日)
ゲスの極み乙女の『猟奇的なキスを私にして』(2014年8月6日)
チャットモンチーの『こころとあたま/いたちごっこ』(2014年10月29日)
等々リリースされている。
これは旅をするアルバムである。このアルバムを聴きながらソファに深く腰掛け目を閉じると、我々は世界を旅行することができる。そんな風に私は思う。
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1曲目「2034」
インストゥルメンタル。場面は客船に乗り込むところから始まる。豪華客船と言ってもいいかもしれない。共に旅をする大切な人か、はたまた偶然居合わせた見ず知らずの誰かかと、船出を祝ってグラスを交える。
来たる旅への胸の高鳴りが止まらない。打ち込みのドラムから生ドラムへと変わるところはベースラインと相まって堪らない。甲板に上がってみると目の前に広がる大海原に目を奪われた。そんな情景が浮かぶ。
2曲目「日本海」
満を持して岸田繁のボーカル。この曲のボーカルの入りは本当にすばらしいと思う。何度聴いても好き。1曲目の2034がインスト曲であったため、アルバムとしても初めて岸田繁の声がのるところである。気合いが入っているのに肩の力も抜けている。
甲板から海を眺める。日本海というからには出発点は日本なのだろう。向こうに見えるはロシア。めっちゃ北の方やな。
私は早朝、夜明け前の暗がりを想像していたのだがこの曲の歌詞には「静かな海を観ていたら月灯り」とある。解釈違いだ。なうなう。
3曲目「浜辺にて」
焦らす。焦らしに焦らす。1曲目にインスト、2曲目に掴みどころの無い曲、と来てついに3曲目来るか!?わかりやすい盛り上がり曲来るか!?と思ってたらもう1発掴みどころの無い曲。好き。
「突然列車を降り立ち 波打ち際へ向かった」
どこ?俺の今までの船旅どこいったん?返して。
出発前の話かな?だとすればこの旅は計画性の無い突発的なものであることがわかる。
1曲を通して同じリズムのベースとドラム。この単調さが掴みどころの無さに拍車を掛けてるし他のウワモノを際立たせてる。と思う。
4曲目「ロックンロール・ハネムーン」
浜辺にて、の時点で既に目的地に上陸はしていたと思う。この曲はいつもとは違う街に、空気に、少しわくわくして、少しという表現は些か控えめだけど少しどきどきしているんだと思う。ホテルまでの道とかそんな感じかな。ほんでチオビタも飲んでる。
最初から最後までトランペットが印象的である。わかりやすい盛り上がり曲は次の曲なのでそこに向けてジワっと上げてきたな、という感じだ。
余談ではあるがアルバムを通しで聴いた時、個人的にはこの曲の印象は薄い。この曲が霞むってどういうこと。
5曲目「Liberty&Gravity」
間違いなくこの時期のくるりを代表する1曲だろう。PVもすばらしい。
くるり-Liberty&Gravity / Quruli-Liberty&Gravity
私はずっと東南アジアあたりの市場や出店でよくわからん果物に噛り付いてよくわからん麺を啜る岸田繁を想像しながら聴いていたが、東南アジアに行く道中ではロシアは見えない気もするのでよくわからん。
ヘンテコな曲である。後にくるりが発表した「ソングライン」という曲に対して岸田繁は「全部詰め込んだ曲」と言っていた(気がする)が、この辺りからその兆候が、1曲に全部詰め込む、削らないスタイルの曲作りが確立されていったんじゃないかと思う。
6曲目「しゃぼんがぼんぼん」
わかる。この辺りでこういう曲を置きたくなるのメッチャわかる。
Liberty&Gravityで聴衆を殴り飛ばした後に、雪崩のように畳み掛けるアップテンポの曲。Liberty&Gravityからそのままlovelessに繋げるのではなく一度この曲を挟む。それが呼吸ってもんだろ。
7曲目「loveless」
地中海。太陽が燦々と降り注ぐ白壁の街並み。水面きらきら。
違うかなぁ。そうとしか思えないんだけどなぁ。でも東南アジアからいきなりヨーロッパは飛び過ぎな気がするんだよなぁ。
何気にこのアルバムで一番聴いてる曲だと思う。他の曲はアルバムの流れの中で聴きたいけどこの曲は単体でも聴きやすい。
8曲目「Remember me」
旅の途中で故郷に想いを馳せること、あるでしょう。タイミング的にもこの辺りで間違いない。
弦楽器の映える『ワルツを踊れ Tanz Walzer』と歌モノ(非常に曖昧な表現だが)の『魂のゆくえ』、この辺りのアルバムの延長線上に『THE PIER』が存在している。
なんかもうこのへんから語ること無いんだよなぁ。多幸みが深い。
ボーカルの余韻の残し方ほんと上手いよね。別の曲だけど「ロックンロール」とか時々自分で口ずさむと全然本家と違う。当たり前だけど。
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このアルバムに出会ったのは高校2年生の時だったかなぁ。一番聴いていたのは高校3年生の時だと思う。
CDのミックスをする機会があったので、良い音とは何か、みたいなことを日がな考えて音楽を聴いていた日々だった。
このアルバムは良い音だと思った。というか天下のくるりの最新アルバムなんだから悪い音なわけないだろ、と思って聴いてた。
でもこれは良い音とか悪い音とかじゃなくてくるりの音なのだ。そう、くるりの音なの。まったく参考にならない。
受験期、特に進路選択を悩んでいた時にずっと聴いてた。ヨーロッパの学校に登校してヨーロッパの学校で休み時間を過ごしてヨーロッパを通って家に帰った。進路選択にもきっと大きな影響を与えていたと思う。
無意味に2枚目を買ってみようかな、とも思った。今でもまだ隙あらば2枚目を買ってやろうと目論んでいる。初めてのレコードはこのアルバムがいい。
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9曲目「遥かなるリスボン」
夕方なのか朝なのかわからない。たぶん夕方まだ日の落ちる前、3時ごろだと思う。
自分はこの辺りから眠くなるから最後のメリークリスマスぐらいまで寝ることが多い。
10曲目「Brose & Butter」
この曲3分も無いんだね。4分半ぐらいあるイメージだった。濃厚なイメージ。どろっとした液体。まさに蜂蜜。
眠い。寝てる。個人的にはこの後のAmamoyoとセットだと思ってる。なんとなく。
11曲目「Amamoyo」
寝てる。変な曲。寝てる。
ゴールデンアワーなのかなぁ。歌うと言うより語り口調。このアルバムで唯一の作詞・作曲佐藤征史。言われてみればjumboと同じ雰囲気がする。
12曲目「最後のメリークリスマス」
メリークリスマス。夜の街並み。光る街灯とイルミネーション。サンタが出てくるクリスマスソングというよりかは北風吹く夜の街をマフラーして歩くイメージ。知らない誰かが作った雪だるまもありそう。
13曲目「メェメェ」
メェメェ。
14曲目「There is (always light)」
最後の曲。帰りの飛行機で地元の友達を思い出す。
なぜ自分がこの曲を好きなのか言語化できない。アルバム後半はそんな曲ばっかり。ただそこにあるから好き。この流れの中に存在しているから好き。
このアルバムの最後を飾るに相応しい。この曲以外ありえない。
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このブログを書きながらまた通算130回目ぐらいの世界旅行に出掛けてしまった。みなさんも一緒にどうだろうか?